京都マンガフェスタ2007 イベントのご案内
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小松正史ライブ

マンガ・サウンドスケープライブ  マンガオノマトペライブ
日時 2007年 4月1日(日)
①午後0時~ 1時30分 
②午後3時~ 4時30分
  日時 2007年 5月4日(金・祝)
午後1時~ 2時30分
会場 メインギャラリー  会場 メインギャラリー

マンガに音楽をつけるとどうなる!?

 小松正史がコミックを見つつ、即興音楽を鍵盤演奏するライブ。音地図づくりの実践を交えながら、サウンドスケープ(音の風景)によって、マンガの印象が変わる面白さを体感して下さい。

京都精華大学構内で描かれた音地図 京都精華大学構内で描かれた音地図

音地図(サウンド・マップ)

 音地図とは、耳から聞こえる音の印象を図で表現する手法である。厚紙・筆記用具があれば、どこでも行える。自分の位置を×で記し、聞こえた音を図化(記号=文字化)し、方向を考えながら紙面上で表現する。音が前から聞こえてくれば紙の上部に、後ろからだと下部に記録する。
 文字そのもので音の環境を表現したり、図だけで表したり、図と文字をマンガの吹き出しでまとめたり、音喩(音を擬音語・擬態語で表記した言葉)で表現したりと、さまざまな手法がある。音地図は、人と人の感性をつなげるパイプの役目として働くので、野外ワークショップで有効である。

サウンドスケープとは?

 風景は、目だけでなく、聴覚で感じるものでもある。サウンドスケープは「音の風景(音景観)」の意味で、カナダの作曲家マリー・シェーファーによって1960年代に提唱された。音の風景から物事の本質に近づけること、目に見えない品格・風情・雰囲気がわかることが、この切り口の素晴らしさである。純真に音を聴くことから始まり、地域の音調査、最終的には、サウンドスケープ・デザイン(音環境計画)を実践し、あるべき姿の音に調律することを目指している。

 

 マンガにはオノマトペ(擬音語や擬態語などの「音喩(おんゆ)」)が多用されています。日本語は、オノマトペなくしてありえない!? 日常生活に深く浸透しているオノマトペの魅力を、小松正史が鍵盤演奏とレクチャーの二本立てでお伝えするライブです。

音喩と日本人

 音の環境を言葉におきかえると、どんな世界が展開されるだろう? 車は「ブー」、小鳥は「チュンチュン」、音のない世界は「シーン」…。環境音にマッチした「音喩(擬音語・擬態語)」と呼ばれる一連の表現がある。「人の音の感じ方」に想いをはせられる比喩表現でもある。日本語の音喩の分量は英語の五倍ほどにもなり、きわめて日本色の強い表記である。音の響きそのものや、音が出ている場面での言葉にならない「雰囲気=空気感」を、文字に置き換えて表現する手段が“音喩”であり、マンガ表現には欠かせない。
 音喩が培われてきた背景には、場の雰囲気を読み込んで表現する、日本人の美意識や想像力の存在がある。音なき音に耳をそばだて、音喩に変換する。その瞬間、音の生々しさは消えるが、音喩からつくられた「響きのイメージ」が、予想以上の実感が込められて伝わるから面白い。場の空気を即座に読み込み、環境の変化に即座に呼応し生活してきた日本人の感覚が、音喩に隠されている。

音喩(擬音語・擬態語)が込められた音地図 京都精華大学構内で描かれた音地図

◎小松正史 プロフィール
 音環境デザイナー・環境音楽家。1971年、京都府生まれ。大阪大学大学院修了。博士(工学)。サウンドスケープ論、五感環境学、ピアノ即興演奏、公共空間(京都国際マンガミュージアム・京都タワー展望室等)の音環境デザイン、CD制作などを実践。著書に『音ってすごいね。』『京の音』等、CD作品に『いーね』『The Scene』『コヨミウタ』『kyoto ambience』等。現在、京都精華大学人文学部准教授。


環境音楽について

 現在、京都国際マンガミュージアム館内で使用されている環境音楽は、小松正史が制作したものである。館内はもちろんのこと、ブース内のCDでも試聴できる。

 環境音楽は一般的に、日常生活の背景として活用されるような、静かな音楽のジャンルを示すことが多いが、本来は、音楽の作曲・使用方法に関する「思想」を表す言葉である。大量消費・大量生産される商業音楽を集中して聴取する音楽流通の弊害に対し、一石を投じる思想・態度である。

 環境音楽の効用をわかりやすくいえば、環境の居心地をよくする「隠し味」である。制作のさいは、場全体のサウンドスケープにまで配慮し、しかるべき音量・音質・構造を考慮し、音環境デザイナーによってオーダーメードされる。環境音楽の刺激がきっかけとなって、利用者が(音)環境を深く意識する機会になればと願う。