マンガに音楽をつけるとどうなる!?
小松正史がコミックを見つつ、即興音楽を鍵盤演奏するライブ。音地図づくりの実践を交えながら、サウンドスケープ(音の風景)によって、マンガの印象が変わる面白さを体感して下さい。
京都精華大学構内で描かれた音地図
音地図(サウンド・マップ)
音地図とは、耳から聞こえる音の印象を図で表現する手法である。厚紙・筆記用具があれば、どこでも行える。自分の位置を×で記し、聞こえた音を図化(記号=文字化)し、方向を考えながら紙面上で表現する。音が前から聞こえてくれば紙の上部に、後ろからだと下部に記録する。 文字そのもので音の環境を表現したり、図だけで表したり、図と文字をマンガの吹き出しでまとめたり、音喩(音を擬音語・擬態語で表記した言葉)で表現したりと、さまざまな手法がある。音地図は、人と人の感性をつなげるパイプの役目として働くので、野外ワークショップで有効である。
サウンドスケープとは? 風景は、目だけでなく、聴覚で感じるものでもある。サウンドスケープは「音の風景(音景観)」の意味で、カナダの作曲家マリー・シェーファーによって1960年代に提唱された。音の風景から物事の本質に近づけること、目に見えない品格・風情・雰囲気がわかることが、この切り口の素晴らしさである。純真に音を聴くことから始まり、地域の音調査、最終的には、サウンドスケープ・デザイン(音環境計画)を実践し、あるべき姿の音に調律することを目指している。
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マンガにはオノマトペ(擬音語や擬態語などの「音喩(おんゆ)」)が多用されています。日本語は、オノマトペなくしてありえない!? 日常生活に深く浸透しているオノマトペの魅力を、小松正史が鍵盤演奏とレクチャーの二本立てでお伝えするライブです。
音喩と日本人
音の環境を言葉におきかえると、どんな世界が展開されるだろう? 車は「ブー」、小鳥は「チュンチュン」、音のない世界は「シーン」…。環境音にマッチした「音喩(擬音語・擬態語)」と呼ばれる一連の表現がある。「人の音の感じ方」に想いをはせられる比喩表現でもある。日本語の音喩の分量は英語の五倍ほどにもなり、きわめて日本色の強い表記である。音の響きそのものや、音が出ている場面での言葉にならない「雰囲気=空気感」を、文字に置き換えて表現する手段が“音喩”であり、マンガ表現には欠かせない。 音喩が培われてきた背景には、場の雰囲気を読み込んで表現する、日本人の美意識や想像力の存在がある。音なき音に耳をそばだて、音喩に変換する。その瞬間、音の生々しさは消えるが、音喩からつくられた「響きのイメージ」が、予想以上の実感が込められて伝わるから面白い。場の空気を即座に読み込み、環境の変化に即座に呼応し生活してきた日本人の感覚が、音喩に隠されている。
京都精華大学構内で描かれた音地図
◎小松正史 プロフィール
音環境デザイナー・環境音楽家。1971年、京都府生まれ。大阪大学大学院修了。博士(工学)。サウンドスケープ論、五感環境学、ピアノ即興演奏、公共空間(京都国際マンガミュージアム・京都タワー展望室等)の音環境デザイン、CD制作などを実践。著書に『音ってすごいね。』『京の音』等、CD作品に『いーね』『The Scene』『コヨミウタ』『kyoto ambience』等。現在、京都精華大学人文学部准教授。
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