「紙芝居百年展」マンガと紙芝居のアヤシイ関係?!
~水木しげるも白土三平も紙芝居作家だった。見逃せない幻の作品が連発!!
昭和20年代に盛り上がりを見せた街頭紙芝居は、昭和30年を過ぎると勢いを失います。多くの紙芝居作家たちは、絵物語ブーム、赤本マンガや貸本マンガの盛衰、マンガ週刊誌時代の幕開けがあいつぐなか、マンガの世界に活路を求めました。その中には、マンガ史にその名を残している水木しげるや白土三平、小島剛夕(ごうせき)といった作家がいました。一方、<謎のマンガ家>として近年注目をあびている酒井七馬は、マンガ家から紙芝居作家となり活躍した珍しい例。
このコーナーでは、彼らの紙芝居作品、マンガ作品を紹介しながら、紙芝居がマンガ史にどんな足跡を残したかについて考えます。
また、街頭紙芝居とそれと密接につながったマンガ作品のオドロオドロしい世界の魅力もご紹介いたします。
1:紙芝居から本へ
~「黄金バット」絵物語の世界でも高笑い!
街頭紙芝居の衰退と並行するように起こった絵物語ブーム。それは、『冒険活劇文庫』といった雑誌の中で起こりました。ここでは、紙芝居でも人気だった永松健夫の「黄金バット」の絵物語版をはじめ、小松崎茂や山川惣治の大ヒット絵物語単行本などをご紹介します。
■絵物語作品
- 『冒険活劇文庫』創刊号(復刻版・『少年画報大全』付録)少年画報社、2001年
- 永松健夫『黄金バット なぞの巻・地底の国』(復刻版)桃源社、1975年
- 小松崎茂『地球SOS』(復刻版)桃源社、1975年
- 山川惣治『少年王者』集英社、1948年 ほか
2:紙芝居作家からマンガ家へ
~水木しげる、白土三平の幻の紙芝居作品登場!
街頭紙芝居の人気作家の何人かは、昭和30年代に隆盛を誇る貸本マンガの世界でも活躍することになります。
「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげるはその代表格。ここでは、「紙芝居作家水木しげる」の幻の作品「小人横綱」と「ダイラ」を紹介します。また、アニメ化されて話題の「墓場鬼太郎」の貸本版原本も展示。
「カムイ伝」などで劇画ブームをひっぱっていく白土三平は、本名の岡本登名で、かわいらしいキャラクターのユーモア紙芝居を描いていました。その作品「てる坊」の現物も展示します。世界に一部しかない“原画”です!
■紙芝居作品
- 岡本登=白土三平「てる坊」第268巻、聖和社
- 鈴木勝丸・作、水木しげる・画「小人横綱」、阪神画劇社(複製)
- 鈴木勝丸・作、水木しげる・画「ダイラ」、阪神画劇社(複製)
■マンガ作品
- 水木しげる『墓場鬼太郎』兎月書房
- 山川惣治・原作、白土三平・構成・画『少年王者』第2巻、東邦漫画、1962年
- 小島剛夕『純愛忠臣蔵 お軽と勘平』つばめ出版 ほか
3:紙芝居の中の<不気味なもの>たち
~“もう一人の鬼太郎”と、幻の紙芝居「コケカキイキイ」を知っていますか?
街頭紙芝居では、明るい表の世界とは別の、オドロオドロしくも魅力的な“裏の”世界が展開されていました。その“アヤシイ”世界は、マンガの世界にも一部継承されます。
ここでは、“もうひとりの鬼太郎”として、マンガファンの間で議論になった竹内寛行による「墓場鬼太郎」をご紹介します。水木版と比較してみてください。
この展覧会のひとつの目玉は、幻の紙芝居「コケカキイキイ」が出展されていること!
関西で紙芝居を見た人なら誰もが知っていると言っても過言ではないにもかかわらず、その姿がほとんど確認されていなかった妖怪「コケカキイキイ」。
本展では、その誕生シーンを含め、たっぷり大公開!!
■紙芝居作品
- 入江将介・作、朝原潤一・線、桃山潤二・彩色「悲劇コケカキイキイ」第21巻・第22巻・第23巻・第57巻、神港画劇協会
■マンガ作品
- 伊藤正美・原作 竹内寛行・画『墓場鬼太郎』第7巻・第9巻、兎月書房 ほか
4:<謎のマンガ家>酒井七馬
~手塚治虫「新宝島」“もう一人の原作者”
手塚治虫がその名をとどろかすことになった名作「新宝島」は、戦前からマンガ家として活躍した酒井七馬とともに作られた作品です。
マンガ史に名を残すべき作家である酒井はしかし、東京の雑誌や貸本には進出をはからず、地元大阪で紙芝居の絵描きに転身した<謎のマンガ家>です。
ここではその酒井の紙芝居作品からマンガ作品までを紹介します。
■紙芝居作品
- 佐久良五郎=酒井七馬「鞍馬小天狗」第二編第34巻、三邑会
- 佐久良五郎=酒井七馬「少年ローンレンジャー」第28巻、三邑会
- 佐久良五郎=酒井七馬「原子怪物ガニラ」第3巻、三邑会・刊
■マンガ作品
- 酒井七馬『鞍馬湖天狗 京洛の巻』美育社、1954年
- 酒井七馬『ビックリ坊ヤ』児訓社、1947年
- 酒井七馬『ロバ物語』児訓社、1947年 ほか