京都国際マンガミュージアムでは、世界に通用する日本マンガの魅力を可能な限りありのままの形で後世に伝えるため、極めて原画作品に近い複製<原画'(ダッシュ)>を作成するプロジェクトを進めてまいりました。原画'(ダッシュ)を活用した「原画破損・紛失の恐れがない展覧会」も積極的に行い、京都ではもちろん、毎年夏には東京新宿・紀伊國屋画廊で展覧会を開催しております。
このたび、原画ダッシュプロジェクトでは、新たに2人の作家の原画ダッシュを制作しました。一人は、少女マンガの黎明期より活躍し、華やかな画風と骨太な人間ドラマで、今も活躍中のわたなべまさこ。もう一人は、5年という短い作家生活だが、多彩な作品を残した夭折の作家、花郁悠紀子。対称的とも言える二人の作家から生み出された作品の数々を、原画'(ダッシュ)で公開する展覧会を開催いたします。
会場 |
紀伊國屋画廊 (東京都新宿区新宿3-17-7 紀伊國屋書店 新宿本店 4階) ※会場は京都国際マンガミュージアムではありません。 |
期間 |
2010年8月21日(土)~30日(月) 午前10時~午後6時30分 |
入場料 | 無料 |
現実ではないどこかへいざない、幻想の旅へ・・・。
わたなべまさこは、少女マンガの黎明期より活躍し、デビューから50年以上、今もなお描き続ける作家だ。数奇な運命に翻弄される少女たちのドラマを、読者の憧れを誘う華やかな絵で描き、人気を博す作家である。サスペンスにホラー、一筋縄ではいかない登場人物...。先の読めない展開に、読者はどれほどワクワクしたことか。現在では、中国の長編小説「金瓶梅」をマンガ化し、大人の幻想の世界を描いている。
花郁悠紀子は、わたなべまさこに対し、たった5年という短い作家人生で終えた夭折の作家だ。しかし、その短い作家生活でありながら、ファンタジーから人間ドラマまで、彼女の作風は幅広く、今も読者の心に強く残り続けている。緻密かつ抜群の色彩センスは、死後30年経った今も全く色あせない。
そんな二人の作品をおよそ60点、を、原画'(ダッシュ)にて公開する展覧会を開催いたします。掲載雑誌などではわからない、細やかな描線や絶妙な色使いに驚くことでしょう。
また、本プロジェクト監修者である竹宮惠子の『JUNE』掲載作品の原画'(ダッシュ)も数点公開予定です。この夏、「幻想の旅」を、どうぞお楽しみください。
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プロジェクトリーダー・竹宮惠子の原画'(ダッシュ)作品
JUNE掲載の原画'(ダッシュ)数点 -
わたなべまさこの原画'(ダッシュ)作品
「白馬の少女」「王女ミナ子」「ふたごのプリンセス」「ガラスの城」「聖ロザリンド」「春日局」「金瓶梅」など計30点程度 -
花郁悠紀子の原画'(ダッシュ)作品35点
「アナスタシアのすてきなおとなり」「四季シリーズ」「フェネラ」「夢ゆり育て」「踊って死神さん」 など計30点程度 - わたなべまさこ、花郁悠紀子 掲載誌など
- 出展作家の書籍など販売
原画'(ダッシュ)について
原画'(ダッシュ)とは、コンピュータにマンガ原稿を取り込み、綿密に色調整を重ねた上で印刷した、精巧な複製原画です。描線の濃淡や色彩の階調など微妙な細部まで再現し、原画と並べても見分けがつかない程の精度を持っています。他の複製原画と特に違う点は、「傷や汚れもそのままに原画の状態をアーカイブする」という理念の基に作成されていることです。傷や汚れの一つ一つにも、時代背景や作家の技などが読み取ることが可能な貴重な足跡と考えているからです。マンガ「風と木の詩」「地球へ...」などの作者で、京都精華大学マンガ学部教授の竹宮惠子が中心となって研究を進め、退色しやすいデリケートなマンガ原稿の保存と公開を両立させるために開発しました。
関連イベント
わたなべまさこ×波津彬子×竹宮惠子
スペシャル座談会
日時 |
2010年8月21日(土) 午後2時~3時30分 |
会場 | 紀伊國屋画廊 (紀伊國屋書店 新宿本店 4階) |
料金 | 無料 |
定員 |
※ ただし、入りきれない場合は、入場制限あり。施設の都合上、整理券は配布いたしません。 ※ 開催当日、先着順に前部よりつめてお座りいただく形となりますが、事前に長時間お並びいただくことはご遠慮ください。予めご理解、ご協力をお願いします。 |
主催: 京都国際マンガミュージアム
【お詫び】
初掲載時にイベントタイトルに誤記がございました。波津彬子先生および関係各位のみなさまに深くお詫び申し上げます。
【巡回展予定】
期間 | 2011年2月27日(日)~3月31日(木) |
会場 | 京都国際マンガミュージアム |
入場料 |
無料 ※ミュージアムへの入場料は別途必要です |
わたなべまさこ略歴
1929年、東京都出身。1952年、描き下ろし単行本『小公子』(金園社)でデビュー後、赤本漫画・貸本漫画の世界で活躍。1957年から集英社の『少女ブック』で「山びこ少女」を連載。数奇な運命に翻弄される少女たちのドラマを、読者の憧れを誘う華やかな画風で、人気を博した。1971年には、集英社『週刊マーガレット』連載の「ガラスの城」で小学館漫画賞を受賞。その後、1972年に「聖ロザリンド」でホラー作品に進出、1979年には「悪女シリーズ」でレディスコミックの先鞭をつけるなど、時代によって代わる読者の期待に応え続けている。現在は、「金瓶梅」を連載中。2002年には、日本漫画家協会賞文部科学大臣賞を受賞、2006年には旭日小綬章を受章。花郁悠紀子略歴
1954年、石川県生まれ。19歳で上京し、アシスタントをしながら、投稿生活を送る。1976年、『ビバ・プリンセス』(秋田書店)にて「アナスタシアのすてきなおとなり」でデビュー。以後も同誌などで、「四季シリーズ」「フェネラ」など、短編作品を主とし、発表。SFファンタジーや外国ロマン、日本を舞台に能楽をテーマにした作品まで、多彩な作風で、先の活躍が期待されていた。特に、抜群の色彩感覚には、漫画家の竹宮惠子も一目置いていた。しかし、1980年、『ビバ・プリンセス』に掲載された「緑蔭行路」の執筆を最後に、金沢に戻り入院。同年、胃癌のため26歳で逝去。5年という短い作家人生ではあったが、想像力あふれる世界観や美しい絵柄は、今も読者の心に残り続けている。妹は漫画家の波津彬子。竹宮惠子略歴
徳島県生まれ。1967年『COM』月例新人賞佳作入選を経て、翌年『週刊マーガレット増刊』掲載の「りんごの罪」で本格デビュー。「花の24年組」の一人として新世代の少女マンガをリードし、1979年度に「風と木の詩」「地球へ...」での2作品で小学館漫画賞受賞。現在は、京都精華大学マンガ学部の学部長として、後進の才能の育成に日々務めている。
◆えむえむブログ
≫ 原画ダッシュ展「わたなべまさこと花郁悠紀子 幻想の旅」 今週末から開催! (2010/8/17)
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