知られざる中国〈連環画 (れんかんが)〉
~これも「マンガ」?~
「連環画」をご存知でしょうか? 日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、連環画とは、基本的に1ページが「1枚の絵+欄外の文字」からなる、ポケットサイズの中国の出版物です。20世紀初頭から中国に登場し、安価で読むことができたため、子どもから大人まで、多くの人達に親しまれていました。中国の大衆向けメディアの中でも大きな位置を占めてきた連環画には、その時々の中国の社会情勢や人々の生活なども垣間見ることができます。
京都国際マンガミュージアムでは、そんな連環画を多面的に紹介するとともに、同じ大衆的な視覚メディアであるマンガとの接点をさぐる展覧会を開催します。
日時 |
2015年4月25日(土)~7月5日(日) ◇開館時間:午前10時~午後6時(最終入館は午後5時30分) ◇休館日:毎週水曜日、4/30、5/7、6/1~4 ※4/29、5/6は開館 |
会場 | 京都国際マンガミュージアム 2階 ギャラリー4 |
料金 | 無料 ※ミュージアムへの入場料は別途必要です |
主催:京都国際マンガミュージアム / 京都精華大学国際マンガ研究センター
協力:北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター境界研究ユニット(UBRJ)
内容
本展監修にあたる中国文化研究者・武田雅哉氏(北海道大学大学院文学研究科教授)より借用した300点を超える連環画コレクションを下記のテーマに合わせて展示。なお、内容は北海道大学総合博物館で開催された展示「越境するイメージ――メディアにうつる中国」(2011年)の一部を参考にしている。
連環画ってなに?
連環画の基本的な知識、中国の古典文学「西遊記」「水滸伝」「三国演義」を描いた連環画などを展示。
連環画と中国の人々
文化大革命期の政治宣伝的なものや、映画や海外小説を連環画化した娯楽性の強いものなど、さまざまな連環画のバリエーションを紹介。
連環画を読んでみよう!
連環画の典型的な形式をとった作品「孫悟空、三たび白骨精を打つ」(原題「孫悟空三打白骨精」、画:趙宏本[ちょう・こうほん/Zhao Hong-ben]・錢笑呆[せん・しょうほう/Qian Xiao-dai])を、翻訳付きの拡大パネルで実際に読めるよう展示。また、伝統的な連環画の表現形式とは異なる、西洋・東洋絵画の特質を取り入れた中国「装飾派」の開拓者とも呼ばれる作家・張光宇[ちょう・こうう/Zhang Guang-yu]の長編諷刺作品「西遊漫記」(1945)なども取り上げ、連環画の表現の多様性を紹介。
連環画から新漫画へ
マンガのスタイルに影響を受けて1990年代以降に台頭してきたジャンルである「新漫画」についてなど、連環画をめぐる環境の変化と現在の中国のマンガ事情を考察。
関連イベント・事業
ギャラリートーク
本展企画に関わった焦凡[しょう・ぼん/Jiao Fan]氏(京都精華大学大学院マンガ研究科博士後期課程)によるギャラリートークを開催。
日時 |
2015年4月25日(土)午前11時/午後2時30分 2015年5月30日(土)午前11時 ※それぞれ40分ほどを予定 |
会場 | 京都国際マンガミュージアム 2階 ギャラリー4 |
料金 | 無料 ※ミュージアムへの入場料は別途必要です |
定員 | 40名(先着順) |
参加方法 | 事前申込不要 |
学術シンポジウム
〈連環画〉、そのさまざまな顔 ~他ジャンルとの接点をさぐる~
本展監修者の武田雅哉氏による基調講演のほか、連環画とマンガ・児童文化・文学・演劇など他ジャンルとの連続性を様々な見地から検討するシンポジウムを開催する。
日時 | 2015年5月30日(土)午後1時~5時30分 |
会場 | 京都国際マンガミュージアム 3階 研究室1 |
料金 | 無料 ※ミュージアムへの入場料は別途必要です |
定員 | 50名(先着順) |
参加方法 | 事前申込不要 |
内容/出演者 | 午後1時-1時10分 ご挨拶 |
第一部 研究報告・ディスカッション
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午後3時50分-4時5分 休憩(15分) |
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第二部 講演・対談 午後4時5分-4時35分 【講演】連環画はなぜおもしろいか?:武田雅哉(北海道大学) |
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主催 |
日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究(A)「東アジア域内100年間の紛争・協調の軌跡を非文字史料から読み解く」(代表 貴志俊彦) 日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究(C)「民国期児童雑誌の研究 ──商務印書館編訳所の活動と児童表象を軸に」(代表 佐々木睦) |
連環画について
20世紀の初頭より登場した、ポケットサイズの出版物。基本的に、1ページに1枚の絵が描かれ、欄外に文字説明が書き込まれたものが一般的。中国の古典文学を基にした作品「西遊記」「三国演義」「水滸伝」などが主流であるが、演劇や映画、アニメなどを改編し、絵と言葉で表現したものなども多数ある。子どもだけではなく、大人も楽しませ、民衆の娯楽として大きな役割を果たした。主に本屋で売られていたが、「小人書攤(しょうじんしょたん)」と呼ばれる貸本屋にて安価で借りることもでき、その場に置かれた腰掛けに坐って読みふける子どもも多かった。連環画は、1960年代に最盛期を迎え、文化大革命中も多く作られたが、1980年代の半ばから、マンガの影響を受けた「新漫画」の台頭によりしだいにその人気に陰りを見せ衰退していく。現在では、その骨董的価値を求めるコレクターの愛好品として再び注目を集めている。
武田雅哉(たけだ・まさや)氏プロフィール
本展監修者。1958年、北海道生まれ。北海道大学大学院文学研究科教授(中国文化論)。1995年に、『蒼頡たちの宴――漢字の神話とユートピア』(筑摩書房)にてサントリー学芸賞を受賞。その他、『猪八戒の大冒険――もの言うブタの怪物誌』(三省堂)、『楊貴妃になりたかった男たち――〈衣服の妖怪〉の文化史』(講談社選書メチエ)、『中国乙類図像漫遊記』(大修館書店)、『よいこの文化大革命――紅小兵の世界』(廣済堂出版)、『万里の長城は月から見えるの?』(講談社)など中国文化関連の著作多数。