「大マンガラクタ館」館長のアラマタです。
今回の展示は、館長自身のコレクションから、20世紀はじめに世界中で愛されたパリのマンガ雑誌に光をあてました。
館長は、いまから25年程前に、パリのセーヌ川にならぶ露天古本屋街で、この愛らしい挿絵雑誌を発見しました。一言でいえば、100年前の「パリの最先端ヴィジュアル雑誌」です。ほんとにパリ趣味があふれていて、いまなら、「萌え」アートの元祖といったほうがいいでしょうか。
「大マンガラクタ館」館長のアラマタです。
今回の展示は、館長自身のコレクションから、20世紀はじめに世界中で愛されたパリのマンガ雑誌に光をあてました。
館長は、いまから25年程前に、パリのセーヌ川にならぶ露天古本屋街で、この愛らしい挿絵雑誌を発見しました。一言でいえば、100年前の「パリの最先端ヴィジュアル雑誌」です。ほんとにパリ趣味があふれていて、いまなら、「萌え」アートの元祖といったほうがいいでしょうか。
みごとなハイファッション、生き生きと都会生活を送る若い女性たち、そして世界に名だたる憧れの都パリ、どこを見ても、夢の暮らしです。毎日がお祭り騒ぎです。
また、雑誌に描かれたおてんばなパリジェンヌの姿が、そのままハリウッド映画の名場面に使われたんですよ。
マリリン・モンローの、スカートが風で吹き上がる場面などは、まさにパリの景色でした。そういう夢みたいな華やかさが、現代日本の少女マンガにもそっくりです。
いいえ、ほんとはその逆で、これらの挿絵が大正時代のロマンチックな少女挿絵画家たちに影響を与えたのだと思います。実際、抒情的な少女挿絵で売った蕗谷虹児(ふきや・こうじ)は、パリでこういう雑誌に投稿してました。
ここにご紹介するマンガ家や画家は、ご本人自身がパリのアイドルでした。毎晩歓楽街でパーティを楽しんだ生活が、そのまま絵になるという「ぶっ飛んだ」人たちでした。なかでも、もっともぶっ飛んだ人が、ゲアダ・ヴィーイナとその夫リリ・エルベです。ゲアダは夫を女装させて絵のモデルにしました。夫は女装に目覚め、女性の名前になり、最後は性転換手術をおこないました。この夫婦の話が、4年前に『リリーのすべて』という映画にもなりました。もちろん、彼女の美しい作品も、ここにかざってありますよ!
そういう謎めいた、しかもロマンチックなパリの雑誌挿絵画家たちは、残念なことに、二度の世界大戦のために仕事がなくなり、姿を消してしまいましたが、いま、ふたたび作品の見直しが始まっています。一足先に、20世紀初めのパリで生まれた「原・少女マンガ」をお楽しみください。
京都国際マンガミュージアム 兼
大マンガラクタ館 館長
荒俣 宏