
「戦後」の文化として大きく花開いた日本のストーリーマンガは、戦争にまつわる体験や記憶からさまざまな影響を受けています。逆に言えば、戦後無数に作られてきた「戦争マンガ」を読み解くことで、戦争体験や記憶の継承に対し、私たちがどのように向き合ってきたか、そして、今後どのように向き合っていくべきかを考えるための、さまざまなヒントを発見できるはずです。
本展は、戦後70年となる2015年に、京都国際マンガミュージアムで制作・開催した「マンガと戦争展」の“続編”であり、戦後80年の節目に向けて企画された“最新版”です。この10年の間に、同展は、国内だけでなくアメリカ合衆国を含めた6会場に巡回され、少なからぬ反響を呼びました。
一方、最初の京都展開催から10年、世界情勢はさらに混迷を深めています。日本国内でも、「戦争」や「平和」は、どこかの抽象的な話ではなく、自分事として考えるべき切実なテーマとして認識されつつあります。
マンガに限らず、「戦争」を描く近年のポピュラーエンタメ作品の特徴のひとつは、その舞台としてしばしば、「戦中」のみならず、占領期と重なる終戦直後が選ばれているという点です。そもそも「〈戦後〉はやってきていない」という視点であり問いかけでしょう。「マンガと戦争展2」が、とりわけ沖縄戦を掘り下げ、また、沖縄と京都での開催にこだわる理由は、ここにあります。
はたして「戦後80年」とは、誰にとっての、どのような体験や記憶を意味しているのか。「戦争マンガ」の多様性と現在性にふれながら、一緒に考えてみませんか。
※本展覧会【京都会場】は「京都国際マンガ・アニメフェア2025(通称:京まふ)」の関連企画です。
会場
【沖縄会場】
琉球新報ギャラリー(沖縄県那覇市泉崎1丁目10-3 琉球新報社本社 2階)
【京都会場】
京都国際マンガミュージアム 1階 ギャラリー1・2・3
料金
【沖縄会場】
無料
【京都会場】
無料
※ミュージアムへの入館料は別途必要です
※11月25日(火)は「関西文化の日」につき入館無料
※当日、エントランスの券売機にて当日券のご購入も可能です。
※入館チケットの購入方法は、当日ご入館時に券売機でお求めいただくか、オンラインでの事前購入になります。
時間
【沖縄会場】
午前10時~午後6時
【京都会場】
午前10時~午後5時(最終入館は午後4時30分)
※9月20・21日(土・日)は、「京都国際マンガ・アニメフェア2025」開催につき午前10時~午後7時(最終入館は午後6時30分)
休館日
【沖縄会場】
期間中無休
【京都会場】
毎週水曜日、10月12日(日)、13日(月)、30日(木)
※ただし、7月24日(木)~8月26日(火)は無休
展示構成/展示物
Ⅰ.4象限で示すテーマごとにおける戦争マンガの紹介
「沖縄」など、戦争に関わる複数のテーマを、X軸/Y軸を設定した4象限において、それぞれ4つのマンガ作品を紹介します。そのことで、同じテーマでも、様々なベクトルを持った多様な「戦争マンガ」が存在していることを示します。
Ⅱ.今読むべき/鑑賞すべき戦争マンガ原画の紹介
(Ⅱ-Ⅰ)新里堅進(しんざとけんしん)作品
1973年に、「沖縄決戦」でデビューして以来、半世紀にわたって沖縄戦をテーマとする作品を、沖縄の地で描き続けている新里堅進先生を紹介します。具体的には、近年発表され、先生が、「この3作を読んだら、沖縄戦のことが一通りわかる」とおっしゃっている最新三部作の原画(生原稿)60点以上を展示します。
- 「シュガーローフの戦い 日米少年兵達の戦場」
- 「死闘伊江島戦」
- 「ヤンバルの戦い 国頭支隊顛末記」

しんざとけんしん「シュガーローフの戦い 日米少年兵達の戦場」
©しんざとけんしん/琉球新報社
(Ⅱ-Ⅱ)大白小蟹作品
「うみべのストーブ 大白小蟹短編集」が、「このマンガがすごい!2024」オンナ編第1位を獲得した、新進気鋭の若手マンガ家・大白小蟹(おおしろ・こがに)先生を紹介します。大白先生は、沖縄出身で、いつか沖縄戦をテーマにした作品を描きたい、と公言されています。具体的には、今回の展示のために描き下ろしていただいたイラスト1点と、戦争をテーマにした寓話絵本「太郎とTARO」の原画10点以上を展示します。
- 「ずっといるのにずっといない」[描き下ろしイラスト]
- 「太郎とTARO」

大白小蟹「太郎とTARO」
©大白小蟹/トーチweb
Ⅲ.戦争マンガ読書コーナー
参考
「マンガと戦争展 6つの視点と3人の原画から」について
戦後70年の2015年に京都国際マンガミュージアムで開催した企画展。6つの視点から選ばれた24点のマンガ作品と、新しい表現の「戦争マンガ」を発表している3人の作家の作品原画が紹介された。その後、同展は、国内だけでなくアメリカ合衆国を含めた6会場に巡回された。
「京都国際マンガ・アニメフェア」について
マンガ・アニメ等を活用した新たなビジネスの創出支援、クリエイターの育成支援・雇用機会の創出、若者や外国人をはじめとした観光客の掘り起こし、コンテンツ都市京都のブランド向上などを目的として毎年9月に開催される西日本最大規模のマンガ・アニメの総合見本市。今年で14回目を迎える。
メイン会場等でのイベントや当館との共通チケット情報などの詳細は、今後随時公開されますので、公式サイトを御確認ください。
【沖縄会場】
主催:京都精華大学国際マンガ研究センター/京都国際マンガミュージアム
共催:琉球新報社
監修:呉智英/吉村和真
【京都会場】
主催:京都精華大学国際マンガ研究センター/京都国際マンガミュージアム
監修:呉智英/吉村和真
※スケジュール・内容については変更の可能性があります。予めご了承ください。