〈ケベック・バンド・デシネ〉を知っていますか? ――25の足跡と7人の作家から
好評につき、2/13までのところ2/20まで会期延長
カナダ・ケベック州で作られてきたフランス語圏のマンガ[=バンド・デシネ]を紹介する展覧会を開催します。
近年日本でも人気のあるバンド・デシネですがケベック州発の〈ケベック・バンド・デシネ〉は、ほとんど知られていません。本展は、その歴史と、現在活躍中の同州出身作家7人の作品(複製原画)を紹介することで、〈ケベック・バンド・デシネ〉の拡がりを知っていただく展覧会となっています。
なお、本展は、2016年京都府とカナダ・ケベック州が友好提携協定を締結したことを受け、両府州の友好交流事業として企画された展覧会です。
カナダ・ケベック州発のコミックス〈ケベック・バンド・デシネ〉を知っていますか?
近年、日本でも翻訳される点数が増えている海外マンガですが、中でも、フランスやベルギー、スイスなどフランス語圏で作られているコミックス=バンド・デシネは、その独特の魅力で、世界中の多くのファンを魅了しています。
しかしながら、フランス語圏でありながら、北米のアメリカン・コミックスの影響も受けることで、独自の多様性を持ったカナダ・ケベック州のバンド・デシネ――〈ケベック・バンド・デシネ〉については、日本ではあまり知られていません。
本展は、2016年にベルギーのバンド・デシネ・フェスティバルのために作成され、キューバ、そしてケベックを巡回した展示をベースに、日本で初めて本格的に〈ケベック・バンド・デシネ〉を紹介する展覧会です。
展示は、
(1)〈ケベック・バンド・デシネ〉の発展を25の足跡からその歴史を解説するパートと、
(2)同州出身作家7人の作品(各5点、複製原画)を紹介し、現在の〈ケベック・バンド・デシネ〉の拡がりを紹介するパートの2部構成となっています。
<展示会場の様子>
写真=浅野豪
プロフィール
キャブ (Cab)
キャロリンヌ・ブロー(=キャブ)は、モントリオールを本拠に、グラフィックデザイナー、イラストレーター、コロリスト(色彩コーディネーター)、バンド・デシネ作家として活動している。描くことに熱心なキャブは、バンド・デシネ作家としての仕事を複数の独立系グループとのコラボレーションから始めた。2012年に、複数のコミックスの表紙を担当するとともに、作家Boumと組んでAmuse-Gueules (Glénat)にストーリーを発表した。2013年には、Front Froid出版のシリーズものFront 6に、『Hiver Nucléaire』シリーズの第1話を発表。初めての単独出版『Hiver Nucléaire』の第1巻が、2014年9月にリリースされた。2016年7月にリリースされた続巻は、Aura-Borealis賞を受賞する一方で、Bédélys賞およびJoe Shuster賞にもノミネートされた。このシリーズの最終となる第3巻が2018年に刊行を予定されていて、英語版もまもなくBoom! Studiosから出版される予定。
エスベ (Esbé)
シモン・ベルジュロン(=エスベ)は、1977年にケベック市で生まれ、バンド・デシネと映画に情熱を抱き続けてきた。コンピュータグラフィックスと文学を学んだ後、初めての著作『Red Death Circus』を発表。次の作品『Le Bouddha Brisé』は、ケベック市に本拠を置くBerBer 13-13出版から刊行された。現在2巻になるこのシリーズは、Bédis Causa賞にノミネートされるに相応しい作品である。独学によって道を切り開いてきたエスベは、Tintin、Superman、One Piece、Scott Pilgrim、Royal Doll Orchestraなど、多様な作品からインスピレーションを得ている。
ミシェル・ファラルド (Michel Falardeau)
ミシェル・ファラルドは、アニメーション界出身で、2003年からバンド・デシネを手掛けている。『Mertownville』(Paquet)シリーズで目覚ましいデビューを果たし、Dargaud(『Luck』)やGlénat(『French Kiss 1986』(アングレーム国際漫画祭でActuabd賞))などの大手出版社と仕事をするようになった。ミニシリーズ『Le Domaine Grisloire』をGlénat者から出版した後、モントリオールに戻り、Lounakで、最新のシリーズ『L’Esprit du Camp』を出版。ミシェルの作品は、対話とキャラクターの心理を重視し、コミックス、バンド・デシネ、日本マンガの要素をミックスして描かれ、ユーモア、ドラマ、空想の世界を織り混ぜて表現している。
パスカル・ジラール (Pascal Girard)
パスカル・ジラールは、1981年にジョンキエールで生まれた。2004年にシクティミのケベック大学シクティミ校で学士号を取得。大学卒業後はバンド・デシネ作家と医療系ソーシャルワーカーを兼業している。最初に刊行された『Dans un cruchon』と『Nicolas』が、2006年のケベック市バンド・デシネ・フェスティバルでRéal-Fillion賞を共同受賞した。他にも、『Jimmy and the Bigfoot』(2011年度のDoug Wright Awardsでベスト・カナディアン・コミックス賞受賞)、『Conventum』、『The Collector』の著作がある。フランス語版はLa Pastèqueが、英語版はドローン・アンド・クオータリー(Drawn & Quarterly)が出版。次に出版予定の『Ours – brun, blanc, noir』は、北米生まれのクマを主人公とするドキュメンタリーで、2018年の初めにリリースを予定している。
フィリップ・ジラール (Philippe Girard)
フィリップ・ジラール(=PhlppGrrd)は、ケベック市で生まれ、1997年に学生新聞にバンド・デシネを描き始めた。それからまもなく作家のLeif TandeやDjiefと組んで同人雑誌Tabasko!を創刊。1999年に、ケベック州に新しいバンド・デシネ文化の伝播に取り組む作家仲間と連携し、出版社Mécanique généraleを設立した。長年にわたる創作活動の成果として、約20のバンド・デシネ/コミック本(フランス語、英語、ロシア語)、6つの若者向け小説と1つの大人向け小説を生み出した。
フィリップ・ジラールの作品は、ユーモアや内面の自己観察を扱うスタイルで、リンヌ・クレア (ligne claire-輪郭をはっきり描く手法)を特徴とする。死やアイデンティティの捉え方など、いくつかのテーマを繰り返し採り上げている。これまでに、ケベック州、カナダ、セルビア、日本などでさまざまな賞を受賞した。最も新しい著作『Le Couperet』は、2017年の春にMécanique généraleから出版された。
レアル・ゴドゥブ (Réal Godbout)
レアル・ゴドゥブは、1951年にモントリオールで生まれた。『Michel Risque』および『Red Ketchup』シリーズのバンド・デシネ作家兼共同著者である。大学で取り留めない勉強をし、早い段階でバンド・デシネの世界に転じ、1969年に創作を始めた。1970年代には、ケベック・バンド・デシネ再生に寄与したリーダーの一人となった。70年代は創造性に富んだ時代で、「ケベック・バンド・デシネの春」と呼ばれている。レアル・ゴドゥブは、イラストレーターとしても活躍している。Les Débrouillards誌にシリーズ物のバンド・デシネを掲載。またフランツ・カフカの作品を基にしたグラフィック小説『L’Amérique ou le Disparu』を創作したこともある。1999年から、ケベック大学ウタウエ校でバンド・デシネを教えている。2009年には、Canadian Comics Hall of Fameに叙された。
ズヴィアンヌ (Zviane)
シルヴィ-アンヌ・メナール(又はズヴィアンヌ)は、1983年生まれで音楽教師を目指していたが、バンド・デシネ作家に方向転換した。同人雑誌でバンド・デシネ界に参入し、その後ブログに作品を掲載して人気が高まった。現在、ズヴィアンヌの作品はPow Pow、Delcourt、Mécanique générale、La Pastèqueなど、さまざまな出版社から出版されている。これまでに、『Apnée』(2010年度ケベック市グランプリ)、『Les Deuxièmes』(2013年度 ケベック市グランプリおよびJoe Shuster賞)、『Le bestiaire des fruits』(Price Independent Bédélys)などが評価され、受賞を重ねてきた。現在は、自費出版雑誌(La jungle)の刊行に携わり、ケベック大学ウタウエ校で教鞭をとり、その一方でアニメ映画の製作や子どもたちとの音楽活動、ウクレレの弾き語りにも取り組んでいる。
※スケジュール・内容については変更の可能性があります。予めご了承ください。
ギャラリートーク 11:00~
ライブ・ドローイング 14:00~16:00