京都国際マンガミュージアムでは、「世の中に忘れられたマンガの先祖たちを掘りおこし、現代マンガのルーツをさぐる」ということを目的に、荒俣宏館長が企画し、プロデュースする「大マンガラクタ館」という小展示シリーズを展開しています。
第4回となる今回は、当館自慢のコレクションでもある、明治時代の風刺マンガ雑誌を紹介します。展示期間中、いまの「マンガ」のイメージとは異なる知的で豪華な〈大人のマンガ〉に、荒俣館長が“ツッコみ”=コメントを入れていく予定です。
※6月18日(火)追記:
展示パネルに荒俣宏館長によるコメントが追加されました!
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休館日毎週水曜日、6月11日、13日
※7月11日~8月27日までは無休 -
会場2階 館長室前
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料金
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主催京都国際マンガミュージアム
京都精華大学国際マンガ研究センター
(1)『東京パック』などに掲載された北澤樂天作品(複製パネル)
(2)『團團珍聞』などに掲載された小林清親作品 ※入れ替えあり
(3)月岡米次郎[芳年]らによる錦絵 ※入れ替えあり
(4)宮武外骨『東京滑稽』など ※入れ替えあり
〈荒俣大マンガラクタ館館長のコメントより〉
いまのマンガは、ぺらぺらした週刊誌や、小さいソフトカバーの単行本が多くて、書斎なんかに置くのは似あわない。ポテチをばりばりほおばりながら読むのに似あうね。それに、子供が読んで分からないような、むずかしい内容のマンガも、見かけないね。
けれど、それはみんな大正時代以後のこと。明治時代にはマンガは豪華な高級印刷物で、値段も高いし、だいいちインテリの大人でないとおもしろさがよく分からないような、難しい「読みもの」だったんだ。今回は、そういう大人のマンガ雑誌を紹介するよ。
マンガミュージアムは、実はこういう雑誌をたくさん持っていますが、その本物を並べてみました。まず、本のサイズが大きい!色刷りがきれいで、女の人の衣装や表情もみごとだ。紙もあつくて高級だ。
ただし、今みんなが見て、絵はおもしろいけど何の話を描いてるんだ?と首をかしげるはず。
じつは、そこに秘密がある!
明治時代には、今のようなストーリーマンガや劇画がなかった。マンガの役割は、好き勝手をやる政治家だとか、いばりくさって庶民をくるしめるお役人たちを懲らしめたり、からかったりすることだった。大人が読んで気分がスカッとしたんだ。これを「風刺」というよ。
でも、「おもしろい絵であらわした悪口」みたいなものだから、政治家やお役人にみつかれば発売禁止になったりした。そこで描くほうも、誰の悪口を書いているのかバレないように、頓智をきかせた「たとえ話」に仕立てた。たとえば悪い政治家を猛獣やバケモノにして描くとかね。その「たとえ」がぴたりと当たれば、人気がでた。
でも、人気が出れば出るほど、弾圧(だんあつ)が厳しくなる。最後は本も出せなくなるので、子供向けのマンガや、ほのぼのした家族マンガ、ストーリーを見せるマンガや美女を描いた風俗マンガなどに切りかわっていった。つまり、「風刺」から毒を抜いて「風俗」に切り替えたんだ。よい子は、そこのところに注目して見てくださいね。
-展示風景-
本展示も含めたアラマタ館長による「大マンガラクタ館」コーナーについての《連載ぶろぐ》はこちらでお読みいただけます。
※スケジュール・内容については変更の可能性があります。予めご了承ください。