文化庁委嘱事業 文化・芸術分野における海外との共同創作活動を通じたの推進 国際交流「日中マンガ文化交流フォーラム」短編マンガ共同制作ワークショップ

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第5日目(2月9日)

いよいよ合評。まずはオンライン班から発表。

中国の学生にとっては、日本語ソフトでの作成という不利な点もあったが、それをものともせず面白い作品が続出し、思わず笑いも起こる、和やかな合評会になった。

左上の写真はミュージアムからタクシーに乗って比叡山へ行く道のりでの出来事を描いた中国の男子学生の作品。写真を取り入れた興味深い作品になった。

その下は日本の女子学生の作品。自分の名前の発音を中国語にすると、どういう意味になるのかを知り、衝撃を受けたことを題材にした。
作品を一通り見た上海の先生は「日本の学生は、全く関係の無いところからストーリーをつなげていく。考える能力が高いと思いました。一方で中国の学生は小さなことから拡大してストーリーを作っていくのが得意じゃないかなと思いました」。とコメント。

オンラインマンガを一緒に作った日本の女子学生は「国は違うけれど隔たりなど全くなく、同じだなあと思いました。みんな上手だし、面白い。もっと交流したかったです」。


続いてストーリーマンガ班の発表。基本的にカラー表紙1枚と2ページ分のストーリーをプロジェクターで映写しながら、説明。

視察ツアーの出来事や、上海の人のイメージを題材にした作品、移動の車中から見えた景色をモチーフにした作品など色々な作品が発表された。

左の画像の上側は色彩の美しさを褒められた日本の女子学生の作品。その下は水墨画風な作風に仕上げた中国の学生の作品。劉先生は「水墨画でマンガを描くのは難しいが、マンガを描く上の技法は多ければ多いほどいい。自分の個性を表現するための選択肢が多くなります。この試みについてはがんばれ、と応援したいです」。

この中国の学生に日本の学生と一緒に制作していて、違いなど感じましたか?と聞いてみた。「ありますね。印刷の点で言うと現在、日本の印刷では薄墨は写らないそうです。ですが中国では薄墨を使っても発色する。最近は中国でも、日本の影響で薄墨を使う人が少なくなってきましたが、がんばりたいです」。そんなところにも作風の違いが現れてくるとは驚きだ。




▲ 「がんこ親父」というテーマで描いた作品。
日中どちらもがんこ同じに対するイメージは似ていて、笑いを誘った。


合評を終えて、劉先生は「今回のフォーラムはテンポも速く大変だったでしょうね。両国の学生はその中で十分に成長してくれたと思います。出来上がった作品には個性があり、文化の差なども歴然としています。今回のフォーラムによって両国の学生は制作のアイディアや技法など参考になって、将来に良い影響となったのではないかと思います。意味の深いイベントになりました」。

にしの先生は「見ていて,両国とも同じようにがんばっているのがとても美しかったです。マンガというのは、元々トンチ絵で、戯言の絵と言われるものですから、内容はくだらないものでも全く良いと思います。その意味では、身近な感動を表現するのは基本的で良いことです。また自分の考えを表すという意味でも、とてもいい作品ができあがりました。
今回、デジタル作品は1人で1作品なのに対し、アナログは4作品も作ったということは、同じ時間の中で、スピードの差がこれだけ大きいということがわかりました。デジタルは音をつけたり色を付けたり動かしたり、できることは増えるけれど、その分個人の負担は大きくなる。その意味ではアナログは時間をかけずに描けるし、自分の思いを素直に出せる、ということを改めて感じました。
現在、君らとほぼ同世代の人がプロのマンガ家として、自分の思いをストーリーや絵にして世の中に出している。そして人気になると、ゲームやアニメになり、ビッグビジネスへ発展していく。大きなエンターティメントの核が、たった1人の20代の若者というのはマンガだけです。ですから一人ひとりにビックな可能性があるということを覚えておいてください。
同時にマンガは国を越え、色々な所で読まれることで、いろんな感情や考えを共有することができる。できることなら、さらに交流を重ねることで、より高い作品を作っていきたいと思います」とエールを送った。
この5日間の出来事は、将来、日本・中国両国のマンガ界を背負っていく学生達にとって、非常に貴重で有意義な時間だったに違いない。

劉先生からのプレゼントをもらう。プレゼントをもらった時の喜びを表現する方法が日中では違っていて、新たな文化の発見も。

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